《 早川洋介油彩画展 ~方広寺の片隅~ 作者挨拶 》
私が初めて方広寺を訪れたのは、今から23、4年前の事だったでしょうか… ある書家の先生のお宅に伺うつもりが道を間違えて、行けども行けども辿り着かず次第に焦りと不安が押し寄せてくる中、偶然にも目に入って来たのが、凛とした朱塗りの三重の塔の姿でした。
目的地ではない筈なのに何故か安堵の気持ちを覚え、「牛に引かれて方広寺参り…ってか?これも何かの縁か」と、因縁じみた何かを感じたのを思い出します。それから数回訪れては三重の塔のスケッチをしたりしました。
迷いだらけの中で時が経ち、20年の余が過ぎたある日、ふと「そうだ…方広寺だ。」と思い、出掛けました。シトシトと雨の降ってる日でした。久しぶりの空気は懐かしくもあり、新鮮でした。そして何より驚いたのは、以前には見えなかった、見向きもしなかったものが目に入ってくるのです。何処を見ても絵が展開されるのです。「これは描くしかない。」で、作品が出来上がっていきました。
此の度は、多くの方々の御親切を経て方広寺の御恩情に預かる事が出来、作品発表の機会に恵まれました。方広寺が元となった絵を現地で展示できるという事は、絵描きにとってこの上ない環境だと思います。何かを感じ取って頂ければ幸いです。
時節柄、寒い折ではございますが、御高覧下さいませ。
2013年1月吉日 早川洋介